UI/UXデザイナーなど、デザイナーの業務領域が広がっている昨今。「インタラクションデザイン」という、比較的新しいデザイン手法が注目されています。
ビジュアルや見ためだけでなく、ユーザービリティやコミュニケーション、体験までもが「デザイン」という領域に組み込まれる時代。デザイナーにも、より「頭脳派」なスキルが求められています。
今回の記事では、そんなデザインに求められる新たな考え方のひとつである「インタラクションデザイン」について学んでいきます。
「インタラクション(Interaction)」という言葉は、日本語で「相互作用」と訳されます。
「インタラクションデザイン」は、Webサイトやアプリの「理想的なユーザーエクスペリエンス(UX)」を実現するために、ユーザーと製品の間の「相互の」コミュニケーションをプロデュースするデザインの考え方です。このため、インタラクションデザインは、「UXデザイン」という大きな目的を達成するための、ひとつのプロセスともいえます。 では、インタラクションデザインのプロセスでは、どのような方法でUXを高めていくのでしょうか。
インタラクションデザインは、人間工学や生物学、心理学などの考え方を用いて「ユーザーにとって一番使いやすいデザイン」を、論理的に、戦略的に考え抜きます。たとえば、下記のような考え方です。
「製品(Webサイト/アプリ)」と「人」との接点で…
などを考察する。
このプロセスを具体的に分析し、製品に設計していくうえで、もっとも重視されるのは「人間の感覚」です。そのため、インタラクションデザインは「人間を中心としたデザイン」(HCD/human-centered design)ともいわれています。
インタラクションデザインの役割について、もう少し掘り下げてみましょう。
アメリカのインタラクションデザインの専門家Bob Baxley氏(著書『Making the Web Work』)は、2002年に公開したレポート「Introducing Interaction Design」で、インタラクションデザインが重視する役割を5つの項目でまとめています。
インタラクションデザイナーのもっとも基本的な役割は、人間と機械のコミュニケーションの「翻訳者」となることです。人間と機械が簡単に、効率的にコミュニケーションできる方法を考えます。
アクション/リアクション(操作と操作に対する反応)が常にアクティブな状態あることが重要です。そのために、設計者はアクション/リアクションが時間の経過とともにどのように進行するかを理解し、予測する必要があります。
ユーザーがアプリケーションの現在の状態を理解できるようにすることも必要です。情報の表示や音などの「反応」で、現在の状況をわかりやすく伝え、ユーザーが「次にどんな操作が可能か」「適切か」がわかるように設計することが求められています。
インタラクションデザインは、個別のタスクを完了するだけでなく、マルチタスクのフローをわかりやすく指南することにも向いています。その機能が「誰に向けたものなのか」「なにができるのか」を整理するとともに、その先にどのような機能や選択肢があるのかをわかりやすく伝えることが大切です。
人間同士のコミュニケーションと同様に、人と機械とのコミュニケーションでも、誤解や間違いは生じます。これらのエラーを予測し、最小化し、「ユーザー」「システム」の両面から簡単に回復できるように設計することが必要です。
引用元:Boxes and Arrowsよりエムタメ!にて翻訳
では、インタラクションデザインの考え方を採用したデザインにはどのようなものがあるのでしょうか。下記は、アメリカのデザイナーコミュニティ/ショーケースサイトである「Dribbble.」で、紹介されている世界のクリエイターが作成したインタラクションデザインの例です。
GIF参照元:Dribbble.
これまで見てきたように、インタラクションデザインの思考プロセスには、ユーザーの行動・心理・体験に対する深い考察と論理的な発想が必要です。ユーザーエクスペリエンスが重視される時代、デザイナーに求められるスキルは高度化、多様化していますが、日本ではまだまだこの新しいデザイン領域のプロフェッショナルは少ない印象です。
さまざまなサービスが普及し、成熟し、より質の高い「体験」が求められる時代。次世代型の「頭脳派」デザイナーを、どう採用していくか、どう育てていくかが、時代の先端を走るITベンダーのなかで課題となっています。