【社長対談】LOCUS代表 瀧氏に聞く、動画広告の未来(後編)

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動画制作会社として年間約2,000本の動画を手がける株式会社LOCUSの代表取締役:瀧 良太氏に動画広告の活用のコツや今後の動向について、Mtame株式会社の代表取締役:金井との対談をお届けします。

後編では、Googleが提唱する「HHHモデル」について、そもそも、動画広告にはどんな商品や目的がマッチするかといった点などをうかがいます

前編はこちらをご覧ください。

1.BtoBとBtoCでは比重をかけるべき制作カテゴリが異なる
~Google提唱の「HHHモデル」に沿った動画制作手法と動画事例~

金井:話は少しそれますが、動画広告の基本モデルはGoogle社が提唱している「HHHモデル」なのだろうと思いますが、実際にこのモデルに合わせて「Hero(ヒーロー)動画」、「Hub(ハブ)動画」、「Help(ヘルプ)動画」を3本セットで発注する企業は多いのですか?Web検索で「HHHモデル」の事例を調べても、同じ企業が「HHHモデル」の3本セットで動画公開している事例がなかなか見つかりませんね。

瀧:まだ少ないとは思います。おそらく、商品・サービスの認知を担当する人、ロイヤルカスタマーの育成を担当する人と、それぞれの動画の担当者が異なるケースがあるのも一つの要因だと思います。中小企業やベンチャー企業の場合は同一担当者になるのでしょうが、大手企業の場合は、そうではないケースもありますので部署横断のプロジェクトとして取り組まないと「HHHモデル」を一気通貫で実現することは難しそうですね。

金井:ということは、これらを一括で担当できるようなマーケッターが企業側に必要ということになるのでしょうか?

瀧:理想をいえば、そうです。海外だと、日本のように、広告代理店に丸投げする風習が少ないんですね。日本でも、マーケッターが育てばそうなるかもしれませんが、日本の大手企業には、ジョブローテーション制度が根付いているので難しいのではないかと思います。例えば、企業側の広告担当が3年ずつで入れ替わると仮定して、広告代理店側の担当者はベタ付きだとしたら、企業側の担当者よりもよほど詳しかったりするケースもあり得ますからね。

金井:Googleとしては、理論上、「HERO、HUB、 HELP」でキレイに分けたかったのでしょうが、実際には、そうはっきり分かれるものでもないだろうと思うのですが。

瀧:「HHHモデル」には、ダイレクトレスポンスでいう「獲得」の概念があまりないようです。まったくないわけではないですが、HUBなのかHELPなのかが曖昧ですね。HUBとHELPも分けるのが難しいものがあります。

金井:BtoCだとHERO動画が重要なのは理解できるのですが、BtoBだとHEROコンテンツを作るのが難しいと感じます。

瀧:その通りですね。BtoBはBtoCに比べて、マスで認知を広く訴求するケースは多くありませんが、最近タレントさんを起用したブランディング動画は増加傾向にあります。
テレビCMを打つ予算までは無いけど動画広告への投資はできるという企業にとって、BtoBでのHERO動画は他社よりイメージ戦略を強めたいというニーズを満たす一つの主流になるのではと考えています。

公開させていただける範囲内ではありますが、当社のお客様の事例から、それぞれの動画をご紹介します。

【アーツアンドクラフツ株式会社】

HERO(ヒーロー)

ぬくもりが宿る結婚指輪

HELP(ヘルプ)
オーダーからご納品までの流れ

【インタースペース様】

HERO(ヒーロー)

「Xーlift」ブランディング動画

HUB(ハブ)/ HELP(ヘルプ)

「Xーlift」サービス紹介動画

【日本赤十字様】

HERO(ヒーロー)

ブランディング動画

HUB(ハブ)/ HELP(ヘルプ)

寄付方法紹介動画

2.Youtubeに動画広告を掲載するなら広告出稿もマスト
~Youtubeにおける動画広告の出稿手法~

金井:HEROコンテンツなど動画をコンテンツ化することを考えた場合、すでにブランドが確立している企業の場合はやりやすいのではないかと思うが、当社のようなBtoBのITツールベンダーの場合、どのように作っていけば良いのでしょうか?

瀧:ケースバイケースですが、まずはターゲットをきちんと設定して、そのターゲットのインサイトを可視化して、見ていて面白い動画を企画することがポイントになってきます。
ターゲットが広告を「自分ごと化」できるような動画クリエイティブを設計することが重要なので、ターゲットのインサイトごとに複数の動画広告を制作し当てていくのが最適でしょう。

金井:なるほど。そのようにして作った動画は、TrueViewで広告として使用したら良いのか、それとも動画サイトで企業アカウントを持って配信していった方が良いのでしょうか?どちらの方が多くのお客様にアプローチできますか?

瀧:経験的に、Youtube channelを開設しても、そこに人が集まっていないと、大海原にコンテンツをぽつんと置いているようなもので、なかなか発見してもらえません。「Youtubeにアップさえすれば見てもらえる」と考えている担当者もいますが、それは間違いです。自社サイトから導線を張ってアクセスさせるならそれでも良いのですが。

金井:では、基本的には、Youtubeにアップして、かつ、広告も出稿して、両軸でやっていかなければいけないということでしょうか。

瀧:そうですね。Youtuberも、タグ付けをして、関連動画として表示されるようにするなど工夫しています。

金井:ところで、Youtubeの企業アカウントは広告動画を流すためだけに運用されているようなイメージがあるのですが、実際のところはどうですか?

瀧:企業としてYoutube channelで登録者数を増やしながら、うまく運用しているところは、少ないのではないでしょうか。一時期、Youtube channelの開設から運用までを請け負うというサービスも出回りましたが、最近は見かけなくなりました。

3.「動画でないと表現できないから動画制作を行う」のが正解
~動画活用のコツ、A/Bテストの方法~

金井:Googleの発表では、動画広告のコンバージョン件数が前年比150%で、今後も動画に力を入れていく見通しを表している。「TrueView Action」をリリースして、今後は認知だけでなく獲得にも動画を活用していく方針だといいます。当社としても、プロモーションにおいて正しく動画を扱えることが今後の中小企業にとって大切なのではないかと考えているところです。ただ、企業の担当者が動画の企画を考えるのはなかなか大変なことで、その点、企画から動画制作をお願いできる御社はありがたい存在なのではないかと思います。まだ動画を活用できていない中小企業向けに、プロモーション用に動画活用の始め方やコツなどを教えてもらえますか?

瀧:私は実は、動画が必ずしも最良とは考えていません。目的によっては静止画の方が効果的なこともあります。
もし、動画広告に着手するなら、まずは、サーチ広告とディスプレイ広告をやりきった後の方が良いのではないかと思っています。たとえば、当社のお客様の成功事例で、リスティング広告などをやり切って、「潜在層にアプローチしたい」という課題がはっきりしていたお客様がいます。
課題・目的がリンクすれば、動画制作をした方が良いと思います。当社では、課題や目的の整理からご相談いただけます。

金井:動画広告でうまくいく企業とそうでない企業の違いは、そこなのでしょうか?

瀧:一番は「動画でないと伝わらない」から動画制作を選んだかという点だと思います。あとは、最初の段階で設計をしっかり作ったかどうか。

金井:まとめると、顕在層がある程度は取れていて、潜在層にアプローチしたいというときに、動画と相性の良い商材で動画制作をするのが正攻法ということでしょうか?

瀧:そうですね。世界観に共感してもらいたい場合などでは、動画が向いています。ただ、正攻法という意味でいえば、まだ広告代理店の担当者でも動画広告の正攻法を把握している人は少なく、PDCAを回してみて勝ちパターンを探っている状態です。

金井:PDCAを回す際に行われるA/Bテストでは、クリエイティブの一部のみを変えるケースが多いのですか?それとも、ガラッと変えてしまうケースが多い…?

瀧:クライアントにもよりますが、たとえばゲームの広告の場合、画像のクオリティを押すパターン、声優を押すパターン、ゲームのキャラクターを押すパターンなどで30パターンほど作ります。反応が良かったものでさらに別パターンを作っていって反応を見ます。
ただ、いくら反応が良かったものでも、ずっと同じクリエイティブを使い続けると反応率が下がってくるので、定期的に新しいものに変えていく必要はあります。

金井:せっかく反応が良いものがわかっても、使い続けることができないのですか。

瀧:どうしても同じものだと効果が落ちていきますね。飽きられてしまうのか、ユーザーにとってノイズになってしまうようです。A/Bテストは、動画広告のなかでも特にダイレクトレスポンス向けの動画制作で主流となっています。先述のように、一つの商品・サービスで20本以上のクリエイティブを制作・運用する事例が増えていますが、現状では、各種スマホアプリやゲーム、コスメ、コンプレックス商材など、広告投下費用が大きい商品に限って見られる傾向ですね。

4.リアルとデジタルを統合的に管理する動画配信システムが一般的になっていく~動画制作・広告市場の今後~

金井:話はスタートに戻りますが、今後の動画市場について、どのように予測されますか?

瀧:冒頭でもお話した通り、まだまだデジタルの動画活用は黎明期といっても過言ではない状態です。まだまだ動画メディアというと「YouTube」が一番かと思いますが、YouTube以上のメディアが存在しないのが現状です。これが、東京オリンピックが開催される2020年を機に発展を遂げるだろうと考えます。具体的には、5Gやスマートフォンに代わる端末の普及により動画をより大量に消費することができるインフラが整ってくるかと思います。

しかし、5Gや端末の普及によりネットだけでなくAR、MRの普及や3Dホログラムなど街中や店頭などリアルな場所にも動画を配信することが当たり前になってくると思います。デジタルとリアルを統合的に管理する動画配信システムなどが今後当たり前になってくるでしょう。また、テレビCMの視聴率の概念を世帯視聴率から個人全体視聴率に代わり、2018年春から関東のスポット限定でリアルタイム+タイムシフト視聴で計測する方法が試験的に始まっているかと思いますが、これで昭和時代から続いていたテレビCMの概念が大きく変わるのではないでしょうか。

ただし、ユーザーとして考えると、タイムシフトでのテレビ視聴の場合、CMをスキップしているケースが多いと思いますので、果たしてどのような位置づけになるのかが興味深いです。タイムシフトより強制視聴となるTVerやAbemaTVのようなスマートフォンで視聴するビデオコンテンツ配信の方が、もしかしたらデジタルのように低単価ではなくテレビCM寄りの単価で広告費が設定できるとなると動画広告の主流の一つになるのかもしれません。

金井:広告だけでなくWebメディアにおいても、これまでは主にテキストと画像の組み合わせで構成されたコンテンツが中心でしたが、動画が組み込まれる記事が増えてきました。今後の「Webメディア×動画」の姿は、どのように変化していくと予想されますか?

瀧:新しい切り口の製品、動く、音が出る、光るなど動画じゃないとわかりづらい、雰囲気を伝えたいという目的の場合、動画のマッチ度が高いのではないでしょうか。
その他、効果が出ているメディアは理美容メディアでサロンの雰囲気を伝えるためや求人メディアで職場の雰囲気を訴求、通販コスメでもLPのファーストビューに動画配置、食材ECでレシピ動画を配信などはCPAアップの事例が多数あります。
インタラクティブや動画視聴中に動画内に映っている商品をフリックするだけでカートに入れられるなどのツールの活用も徐々に増えてきているので、メディア内での新たな活用が、今後、楽しみですね。

金井:本日は、貴重なお話をありがとうございました。

株式会社LOCUS

動画制作・映像制作・動画コンサルティングのLOCUS(ローカス)は動画を軸に企業の課題解決を支援。
年間1500本以上、累計1万本の動画制作実績に基づく確かなノウハウと柔軟な映像制作体制で、費用対効果の高い課題解決を実現しています。
【プロフィール】https://movieprint.jp/users/780

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