リモートワークとは、「リモート(remote/遠い、遠隔の)」と「ワーク(work/働く)」を組み合わせた造語で、会社のオフィスに出勤する代わりにICTを活用しながら自宅などをワークスペースとし、業務を行う勤労形態のことを指します。
就業場所は自宅に限りませんが、新型コロナウイルス禍の影響で急速に普及したこともあり、リモートワークといえば暗に自宅で働くことを意味することが多いです。
本コラムでは、リモートワークのメリット・デメリットやリモートワーク実施のために必須のツール、リモートワークに向いている人・向いていない人などについてご紹介いたします。
目次
8まとめ
リモートワークとは、「リモート(remote/遠い、遠隔の)」と「ワーク(work/働く)」を組み合わせた造語で、会社のオフィスに出勤する代わりにICTを活用しながら自宅などをワークスペースとし、業務を行う勤労形態のことを指します。
就業場所は自宅に限りませんが、新型コロナウイルス禍の影響で急速に普及したこともあり、リモートワークといえば暗に自宅で働くことを意味することが多いです。
近年のICTの進歩・普及やインターネット回線の高速化といったインフラが整ったことで、リモートワーク実現のハードルが下がったといえます。
リモートワークと近い言葉に「テレワーク」があり、意味はほぼ同じです。
言葉ができた時期としてはテレワークの方が早く、1970年代に米国で生まれ、日本では働き方改革やBCP(事業継続計画)手段の一つなどとして広まりました。
テレワークという言葉が普及する前にも、“オフィスに出勤しない”“働く場所にとらわれない”という意味では、「SOHO(ソーホー)」や「ノマドワーカー」などの言葉が使われていましたが、フリーランスや個人事業主など、組織に属さず働く層を指すことが多く、組織に属しながら同僚やチームメンバーとワークスペースを共有することなく、それぞれの場所で業務を行うという意味で使われる「テレワーク」や「リモートワーク」とは一線を画します。
リモートワークは、これまでのようなオフィスワークとは異なる環境で業務を行うことになるため、さまざまな違いが生まれます。
その結果、次のようなメリット・デメリット(課題)が生じます。
リモートワークには、さまざまなメリットがあり、導入企業が増加しています。
まずは、企業側にとってのリモートワークのメリットを見ていきましょう。
オフィスコストを削減できる
従業員の通勤交通費を始め、デスクやチェア、キャビネットといった什器からコピー用紙、クリップといった備品代、印刷代、光熱費まで、かかっていたコストを削減することができます。
また、オフィススペースも削減できるため、賃料の低いオフィス物件に引っ越すなどで家賃コストも削減可能です。
離職低下につながったり、採用で有利になる
デメリットがないわけではないものの、従業員にとってリモートワークは魅力的なものですので、離職を食い止める大きな力になり得ます。
退職を考える従業員のほか、配偶者の転勤や親の介護のために実家に戻るといった理由での退職者も減らすことができます。
また、リモートワークを提供している企業は求職者に選ばれやすいため、採用面でも有利になるでしょう。これまでのようにオフィスに通えるエリアに住む求職者だけでなく、地方や海外に居住する人材まで採用対象を広げることができ、優秀な人材を探しやすくなります。
BCP(事業継続計画)を確保できる
地震大国の日本に拠点を持つ企業にとって、BCP(事業継続計画)は重要な課題です。
近年の大規模災害やパンデミックを鑑みても異論のある方は少ないでしょう。
BCP対策としてもリモートワークは有効です。災害でオフィスが被害を受け、従業員を受け入れられない場合や交通網が麻痺して従業員が出勤できない場合でも、リモートワークを導入していれば、従業員は自宅を中心とする安全な場所で業務を継続できるからです。
生産性が向上する
リモートワーク実施により、従業員のモチベーションや体調といったコンディションの向上・安定が期待でき、業務の生産性向上につながります。
顧客訪問が発生する営業職などでは、移動時間も節約できることで、よりスピーディな対応が可能になります。
さらに、リモートワーク導入を機に業務管理を見直し、スリム化や厳格化が行われれば、業務効率化も叶います。
企業ブランディングの向上につながる
リモートワークを導入していることで、先進的な企業であるというイメージを醸成でき、企業ブランディングの向上につながります。
つづいて、従業員側にとってのリモートワークのメリットをご紹介します。
通勤しなくて済む
自宅で働くことができるリモートワークでは、オフィスまでの通勤がありません。
このため、通勤ラッシュや通勤渋滞のストレスから解放されます。
また、通勤に使っていた時間を余暇や自己研鑽など有意義な時間に当てられます。
育児や介護などで時短勤務をしていた層にとっては、通勤時間がなくなった分を業務に当て、勤務時間を増やすことも可能です。
好きなエリアに自由に引っ越しができる
通勤しなくて済むことで、自宅からオフィスまでの距離を考える必要がなくなり、居住場所が限定されなくなります。
そのため、オフィスの所在地を軸に選んでいた居住地を自由に選んだり、好きなときに好きな場所へ引っ越せるようになります。
ワークライフバランスが向上する
通勤時間がなくなる分、その時間を家族と過ごす時間や、趣味、自己研鑽などプライベートな時間に当てられるようになり、ワークライフバランスが向上します。
気持ちの面でリフレッシュするだけでなく、睡眠時間を増やしたり、運動したり、通院したりしやすくなり、フィジカル面のメンテナンスにも有効です。
育児や介護と仕事の両立がしやすくなる
通勤しなくて済むリモートワークになれば、業務時間を変えずに拘束時間を減らせるため、その分、育児や介護に当てる時間を増やしたり、リフレッシュに使うなど、育児や介護と仕事の両立がしやすくなります。
一方、リモートワークには次のようなデメリットもあります。
まず、企業側から見た主なリモートワークのデメリットには、次のようなものがあります。
セキュアなリモートワーク環境の整備にコストがかかる
リモートワークにおけるサイバー攻撃や従業員の管理ミスによる情報漏えいなどを防止するためのセキュリティ対策を講じる必要があり、そのための時間的・人的・金銭的コストがかかります。
従業員の仕事ぶりの評価がしづらい
従業員がオフィスにいた時とは異なり、業務の進捗を目や口頭では確かめられなくなるため、リモートワーク導入を機に新たな業務の把握方法や人事評価制度を整備する必要が出てきます。
一方、従業員側から見た主なリモートワークのデメリットには、次のようなものがあります。
チームメンバーとのコミュニケーションが取りづらい
それぞれに散らばって業務を行うリモートワークでは、ちょっとした相談や質問、雑談などが気軽に行えなくなるため、コミュニケーション不足に陥りがちです。
企業側は、顔の見えるオンラインミーティングを定期的に開催したり、コミュニケーションツールを導入するなどしてインフラを整える必要があります。
従業員側もリモートワークの心得として積極的にコミュニケーションを取る意識を持つことが大切でしょう。
オフィス環境を自分で整える必要がある
自宅が職場になるリモートワークでは、自力でオフィス環境をつくる必要があります。会社によってはPCなどの端末やオフィスチェアなどを支給するところもありますが、自宅のなかで業務に向く静かで明るいスペースや、長時間作業をしても疲れにくいデスクやチェアを用意するのは日本の住宅事情では簡単なことではありません。
今回の新型コロナウイルス禍で、急遽、リモートワークに切り替わり、家族と一緒の落ち着かない空間での就業を余儀なくされた方は少なくないでしょう。
また、PCやネットワークを自前で用意する場合、オンライン会議用などのWebカメラやマイク、業務に必要なソフトウェア、業務に支障のない速度が出るインターネット回線など、多岐にわたるハードウェアやソフトウェア、インフラを準備しなくてはなりません。
こうしたデメリットの解消を視野に「リモートワーク手当」を支給する企業もあります。手当を使って働きやすいリモートワーク環境を整えて欲しい、という趣旨です。
上記のデメリットを踏まえ、リモートワークを円滑に運用するために活用できるコツやグッズをご紹介しましょう。
ガス圧式デスク
ガス圧式とは、よくオフィスチェアの高さを調節する仕様にある、レバーを上げると自動的に高さが上がり、好きな高さでレバーを離せば固定されるタイプのことです。
高さが固定されてしまっているデスクではなく、自由に高さを調節できるデスクを選ぶことで、作業の種類やPCをリプレースした際に高さを調節したり、時にはスタンディングデスクとして活用したりできるというメリットがあります。
ゲーミングチェア
デスクにオフィスチェアを組み合わせて使用している方は多いでしょう。ただ、長時間のデスクワークを行うことになるリモートワーク時は、ゲーミングチェアがおすすめです。
ゲーミングチェアとは、一日数時間から十数時間もゲームの練習に当てるプロゲーマーのために開発された、長時間座っていても体に負担のかかりにくい姿勢を維持してくれる椅子のこと。背もたれが付いているだけのオフィスチェアに比べ、ゲーミングチェアは体全体をホールドしてくれるため、体をリラックスさせてくれます。
その分、値段は高めですが、せっかく好きなチェアを選んで業務に使えるのですから、リモートワーク手当などを使って導入してみてください。
ディスプレイ
私物のノートPCを業務に使用する場合は、別途、ディスプレイを用意して接続することで画面が大きく見やすくなり、業務が効率良く行えるようになります。
小さなノートPCをのぞき込んで業務を行っていると、前かがみの無理な姿勢を長時間続けることになり、疲労しやすくなりますし、肩凝りや腰痛の原因にもなってしまいます。
また、画面が小さいからと複数のアプリケーションを同時表示させずに、毎回、切り替えで使用するのも非効率的です。
リモートワーク用に会社からノートPCを支給されている場合も、ディスプレイは大きなものを用意した方が良いでしょう。
定期的な業務報告
会社側から定時報告を義務づけられているケースも多いでしょうが、そうでなくても自主的に定期的な業務報告を行うことをおすすめします。
自宅で仕事を行うリモートワークでは、慣れるまで、オンタイムとオフタイムの切り替えをしづらいものです。業務開始時は仕事スイッチを入れるために、業間では緊張感を保つために、業務報告を行うと良いでしょう。
毎日ルーティンをつくる
リモートワーク時はオフィスで働いているときのように同僚や上司がいるわけでないため、ちょっとした雑談で息抜きをしたり、上司の存在に気持ちを奮い立たせたりといったことができません。そのため、集中力が切れてしまったときに、再度、業務に集中するのが難しい面があります。
そんな時のために、毎日必ず行うルーティン業務をつくっておくことが有効です。
あまり頭を使わずに行えるルーティン業務をこなしている間に、自然と集中力が高まっているのを感じるでしょう。
リモートワークでは、オフィスワーク時とは異なる環境・状況で業務を行うことになるため、さまざまなITツールが必要になってきます。
それぞれの従業員が別の場所で個々に業務に取り組むことになるため、情報共有や相談などを行うためのコミュニケーションツールが必要です。
チャットツール
なかでも、チャットツールは必須といえるでしょう。
チャットツールを活用することで、電話やメールといった従来のコミュニケーション手段よりも気軽に、スピーディにコミュニケーションを取れるようになります。
1対1のコミュニケーションのほか、グループを作成して複数人間でのコミュニケーションも可能です。
テキストのほか絵文字を使って気持ちを表現したり、動画ファイルや音声ファイルといったデータ量の大きなファイルを共有することも簡単に行えます。
リモートワーク時に、顔を見ながらコミュニケーションを取りたい場合は、会議システムが必要になります。
会議システムは、社内での会議だけでなく、顧客とのオンライン商談やパートナー企業との込み入った連絡など、社外とのコミュニケーションにも活用できます。
録画・録音機能が付いていたり、無料で導入できるツールも多いです。
オフィスで業務を行う際も個人やチームのタスク管理と可視化は重要ですが、リモートワーク時はさらに重要度が増します。
タスクの内容と期限、進捗状況が管理できるツールを導入・活用しましょう。
マネージャーなど管理する側だけでなく、個々のメンバーにとっても使い勝手の良いツールを選定する必要があるでしょう。
多くの企業では、従業員それぞれの自宅から社内ネットワークへアクセスして、社内のサーバを利用したりセキュリティ環境を利用してリモートワークを実現するため、両者をつなぐためのリモートインフラが必要です。
現状では、VPN(Virtual Private Network/バーチャル・プライベート・ネットワーク)やゼロトラストネットワークを利用するケースが多いです。
ネットワークに対するセキュリティは、社内ネットワークへの既存セキュリティやゼロトラストネットワーク構築時のセキュリティで十分かもしれませんが、個々の従業員が使う端末(PC、タブレット、スマートフォンなど)に対するエンドポイントセキュリティも必要です。
従来のパターンマッチング方式に加え、最近では未知のマルウェアにも対策できる「ふるまい検知」型の製品も出ており、よりセキュアな対策が可能となっています。
医療や介護、保育など、業種・職種によっては、そもそもリモートワークでは成立しないものもありますが、リモートワークが可能な職種に就いていても、性格がリモートワークに向いていない人もいます。
そうしたタイプの人材を強制的にリモートワークに切り替えさせてしまうと、業務効率や生産性が落ちる可能性が高いです。
ここで、リモートワークに向いている人と向いていない人の特徴をご紹介します。
リモートワークに向いている人がリモートワークで業務を行うと、アウトプットの質や業務スピードが向上します。
リモートワークに向いている人の特徴は以下の通りです。
一方、リモートワークに向いていない人の特徴は以下の通りです。
今後、リモートワークはさらに浸透し、在宅で働くビジネスパーソンは増加していくでしょう。
リモートワーク推進の結果、世の中で常識とされてきた働き方にも変化の波が訪れると考えられます。
具体的には次の三点のような変化です。
リモートワークでは、上長が部下の業務のプロセスを目で確認することができません。
在宅勤務者の業務プロセスを可視化するツールなども出て回っていますが、これからは、そもそも「業務プロセスを重視する」考え方そのものが廃れていくでしょう。
人事評価が、「業務プロセス」や「働いた時間」から「成果」へとシフトが加速していくことが予想されます。
前項とも関連しますが、「上長が部下をマネジメントする」ことよりも「各人が自分自身をマネジメントする」ことが重要になっていくでしょう。
つまりは、セルフマネジメントの重要性が増すということです。
セルフマネジメントは自己管理能力ともよばれ、目標や夢を叶えるために自分自身を律することです。
仕事へのモチベーションを保ったり、タスクを管理したり、感情をコントロールしたりすることが含まれます。
オフィスへ出勤して同僚や上司、部下に囲まれて働いていると、会社というチームの一員であるという「帰属意識」が生まれます。
しかし、個々に自宅で業務を行うリモートワークでは帰属意識が醸成されにくく、すでに醸成されていた帰属意識も低下していく可能性があります。
このため、ジョブチェンジに対する抵抗感がこれまで以上に薄れ、転職を検討する機会が増えることが予想されます。
リモートワークに関する基本的な情報をまとめてご紹介してきました。
パンデミックや災害時のBCP(事業継続計画)として、オフィスにかかるコスト削減の手段の一つとして、リモートワークは時代に求められている働き方であり、今後も拡大していくでしょう。
そしてその結果、働き方に対する考え方や、仕事に関する価値観の変容が起こるでしょう。
マーケターの方は、ぜひその辺りも踏まえてマーケティング施策を企画してみてください。